平成31年前期 保育士試験 社会福祉 問15の解説です。
問15は子どもの意見の尊重に関する問題で、記述の正誤を問われています。
記述A~Dをみていきましょう。
問題文は全国保育士養成協議会のホームページで無料公開されています。
こちら(全国保育士養成協議会サイト)から閲覧、ダウンロードできます。
「スタディ」では、このブログや動画を見ながら、お持ちのテキスト本に赤線を入れる、コメントを足す、付箋を貼るなどして、自分の使いやすいオリジナル本を作っていくことをおすすめします。ここでは、福祉教科書「保育士完全合格テキスト2022」を用いています。
Contents
問15の解き方
問15では、「子どもの意見の尊重」が定められている法律がどれであるかを問われています。
まず、記述で問われている法律について、確認しましょう。
児童福祉法
児童福祉法とは、児童福祉を保障するためにあらゆる児童がもつべき権利や支援が定められた法律です。
制定された1947年当時は、戦争孤児が多く、子どもの健やかな成長と最低限度の生活を保障するためでした。その後、子どもたちのよりよい暮らしの実現に向けた改正が行われてきました。現在ある子育てに関する支援の中には、児童福祉法に基づいているものもあります。
児童福祉法 第2条 をみると、 「児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され ・・・」とあります。
第二条 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。
② 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。
③ 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。
児童福祉法 第2条
子ども・子育て支援法
子ども・子育て支援法は、認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)、小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設、地域の子ども・子育て支援の充実のために、平成24年8月に制定されました。
同時に成立した 「認定こども園法の一部改正」、「子ども・子育て支援法及び認定こども園法の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」と合わせた子ども・子育て関連3法 に基づいて、 『子ども・子育て支援新制度』 が制定されています。
子ども・子育て支援法 第2条 をみると、子どもの意見の尊重には言及されていません。
第二条 子ども・子育て支援は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭、学校、地域、職域その他の社会のあらゆる分野における全ての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力して行われなければならない。
2 子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援の内容及び水準は、全ての子どもが健やかに成長するように支援するものであって、良質かつ適切なものであり、かつ、子どもの保護者の経済的負担の軽減について適切に配慮されたものでなければならない。
3 子ども・子育て支援給付その他の子ども・子育て支援は、地域の実情に応じて、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。
子ども・子育て支援法
子ども・若者育成支援推進法
子ども・若者育成支援推進法とは、引きこもりやニートなど社会生活を円滑に営むうえで困難を抱える若者の社会参加を支援する施策について定めた法律です。平成22年(2010年)施行されました。
内閣府に育成支援推進本部を設置し、支援をネットワーク化するなど、国・地方公共団体・児童相談所やNPOによる協力体制を整備しています。
内閣は「子ども・若者育成支援推進大綱」を2010年と2015年の2次にわたり策定し、施策を総合的に推進してきました。
さらに、コロナ禍を考慮し、令和3年(2021年)4月にも、「子ども・若者育成支援推進大綱」が決定されました。子供・若者育成支援の基本的な方針・施策として5本の柱を設け、すべての子供・若者が自らの居場所を得て、成長・活躍できる社会を目指すとしています。
子ども・若者育成支援推進法 第2条 をみると、子どもの意見の尊重に言及されています。
第二条 子ども・若者育成支援は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 一人一人の子ども・若者が、健やかに成長し、社会とのかかわりを自覚しつつ、自立した個人としての自己を確立し、他者とともに次代の社会を担うことができるようになることを目指すこと。
二 子ども・若者について、個人としての尊厳が重んぜられ、不当な差別的取扱いを受けることがないようにするとともに、その意見を十分に尊重しつつ、その最善の利益を考慮すること。
三 子ども・若者が成長する過程においては、様々な社会的要因が影響を及ぼすものであるとともに、とりわけ良好な家庭的環境で生活することが重要であることを旨とすること。
四 子ども・若者育成支援において、家庭、学校、職域、地域その他の社会のあらゆる分野におけるすべての構成員が、各々の役割を果たすとともに、相互に協力しながら一体的に取り組むこと。
五 子ども・若者の発達段階、生活環境、特性その他の状況に応じてその健やかな成長が図られるよう、良好な社会環境(教育、医療及び雇用に係る環境を含む。以下同じ。)の整備その他必要な配慮を行うこと。
六 教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の各関連分野における知見を総合して行うこと。
七 修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者その他の子ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を有するものに対しては、その困難の内容及び程度に応じ、当該子ども・若者の意思を十分に尊重しつつ、必要な支援を行うこと。
子ども・若者育成支援推進法
次世代育成支援対策推進法
次世代育成支援対策推進法は、急速な少子化が進行している中、次の社会を担う子どもたちが健やかに生まれ、安心安全な環境で育っていけるよう、国を挙げて環境整備に努めるために2005年に施行され、10年間を集中的・計画的取組期間とした2015年3月31日までの時限立法です。
法律では、国や地方公共団体、企業や国民が担わなければならない責任を明確にしています。
301人以上の労働者を雇用する企業は、「一般事業主行動計画」を策定し、届け出が義務付けられ、また300人以下の企業では努力義務とされました。
次世代育成支援対策推進法 第2条 をみると、子どもの意見の尊重は記載されていません。
第二条 この法律において「次世代育成支援対策」とは、次代の社会を担う子どもを育成し、又は育成しようとする家庭に対する支援その他の次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備のための国若しくは地方公共団体が講ずる施策又は事業主が行う雇用環境の整備その他の取組をいう。
次世代育成支援対策推進法
正解とまとめ
ここまでみたように、子どもの意見の尊重が規定されているのは、Aの児童福祉法と、Cの子ども・若者育成支援推進法です。
正解は、選択肢3です。
「保育士テキスト2022 (上)」P26「児童福祉法」,P70「少子化の現状」(子ども・子育て支援法)をチェックして、蛍光ペンなどでマークしておましょう。不足している情報は、付箋に書いて貼っておくことも忘れずに!