平成31年前期 保育士試験 社会福祉の問8の解説です。
問8は日本の社会保険制度に関する記述の問題で、記述の正誤を問われています。
記述A~Dをみていきましょう。
問題文は全国保育士養成協議会のホームページで無料公開されています。
こちら(全国保育士養成協議会サイト)から閲覧、ダウンロードできます。
「スタディ」では、このブログや動画を見ながら、お持ちのテキスト本に赤線を入れる、コメントを足す、付箋を貼るなどして、自分の使いやすいオリジナル本を作っていくことをおすすめします。ここでは、福祉教科書「保育士完全合格テキスト2022」を用いています。
Contents
問8-Aの解き方 介護保険制度の保険者
記述Aは、介護保険制度の保険者に関する質問です。
介護保険制度は、介護が必要になった高齢者を社会全体で支えるしくみです。介護保険法で定められています。
制度の運営主体(保険者)は、全国の市町村と東京23区で、保険料と税金で運営されています。
記述Aには、「保険者は、国民に最も身近な行政単位である市町村(特別区を含む)とされている。」と書かれています。
よって、Aは正解「〇」です。
介護保険制度 のポイント
●サービスの対象者
被保険者(保険料を支払う人)には、第1号被保険者(65歳以上の方)と第2号被保険者(40歳から64歳までの方)の分類がありますが、サービスの対象者 (受給者) は、原則として第1号被保険者だけです。第2号被保険者は老化に起因する疾病(指定の16疾病)により介護認定を受けた場合に限りサービスの対象となります。
対象となる高齢者 (第1号被保険者) がサービスを受けるには、審査があります。そして、サービスは原則1割の自己負担が必要です。ただし、前年度の所得などに応じて、自己負担率が2割あるいは3割になります。
●保険料の支払い
私たちは40歳になると介護保険に加入が義務付けられ(被保険者になる)、保険料を支払うことになります。
40歳から64歳までの被保険者は加入している健康保険と一緒に徴収されます。65歳以上の被保険者は、原則として年金からの天引きで市区町村が徴収します。一生涯です。
●介護認定
介護保険サービスを利用する場合には、介護認定を受けるための審査、手続きが必要です。通常1か月程度かかります。
要介護認定を受けたら、「要支援」が出た場合は、地域包括支援センターに相談、「要介護」が出た場合は、ケアマネジャーに相談します。
♪こちらのブログに介護制度のことがよくまとまっています。
「保育士テキスト2022 (上)」P30-32に介護保険法が記載されていますのでチェックして、蛍光ペンなどでマークしておましょう。不足している情報は、付箋に書いて貼っておくことも忘れずに!
問8-Bの解き方 厚生年金保険制度の被保険者
記述Bは、「厚生年金保険制度の被保険者」に関する問いです。
Bでは、「適用事業所に常時使用されている 75 歳未満の者は必ず被保険者となることになっている。」と書かれています。
70歳未満の人が厚生年金の適用事業所で勤務している場合、一部のケースを除き厚生年金の被保険者としての手続きを行う必要がありますが、70歳以上の場合は、原則として厚生年金の加入対象になりません。
よってBは、間違い「×」です。
厚生年金保険制度のポイント
厚生年金は、国民年金に上乗せされて給付される年金です。 厚生年金には国民全員が加入するのではなく、企業の会社員や公務員などしか加入できません。
保険料や将来的に受け取れる年金額は、所得に応じて異なっています。保険料は事業主と加入者の折半です。
老後を迎えると国民年金の老後基礎年金と老後厚生年金を受け取れます。
厚生年金の加入年齢は原則として70歳未満ですが、70歳以上でも働いている場合には一定の要件を満たすと、加入対象になります。
国民年金については、用語集をご覧ください。
「保育士テキスト2022 (上)」P45「国民年金」のところをチェックして、蛍光ペンなどでマークしておましょう。不足している情報は、付箋に書いて貼っておくことも忘れずに!
問8-Cの解き方 雇用保険制度
記述Cは「雇用保険制度」に関する問いです。
雇用保険は政府が管掌する強制保険制度です。労働者をひとりでも雇用する事業は、原則として強制的に適用されます。 雇用保険法に基づいています。
雇用保険の目的は、主に二つあります。一つ目は、労働者が失業、休業した場合の金銭的なサポートをするためで、失業等給付や育児休業給付と呼ばれます。もうひとつは、失業の予防などの労働者の福祉を増進するためです。失業を防ぐための雇用安定、能力開発の事業を雇用保険2事業と呼びます。
なお、雇用保険は「労働保険(労災保険・雇用保険)」のひとつです。
選択肢Cをみると、「失業等給付を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業を行っている。」とあります。
よってCは、正解「〇」です。
問8-Dの解き方 労働者災害補償保険制度
記述Dは「労働者災害補償保険制度」に関する問いです。
労働者災害補償保険は、労災保険ともよばれ、業務上の事故や災害によるケガ、また業務が原因の病気などに対して、補償する保険です。
Dをみると、「業務災害及び通勤災害に関する保険給付、二次健康診断等給付、社会復帰促進等事業等を行っている。」とあります。
業務災害及び通勤災害に関する保険給付 とは、業務上の事由又は通勤による負傷・疾病・障害又は死亡に対して、労働者やその遺族のために行うものです。
二次健康診断等給付とは、労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のうち、直近のもの(一次健康診断)において、「過労死」等(業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発症)に関連する血圧の測定等の項目について異常の所見が認められる場合に、労働者の請求に基づき、二次健康診断及び、脳・心臓疾患の予防を図るための医師等による特定保健指導を給付するものです。
社会復帰促進事業とは、労災保険の事業です。労災保険では保険給付のほかに、被災労働者の方の社会復帰の促進と被災労働者の方やその遺族の方の援護を図るため社会復帰促進等事業を行っています。
よって、Dは正解「〇」です。
労災保険のポイント
労災保険とは「労働保険(労災保険・雇用保険)」のひとつで、事業主が従業員を一人でも雇う際には、必ずこの「労働保険」に加入する必要があります。
労災保険は、業務中のケガや病気にのみ適用され、国から保険金が支給されます。それ以外のケガや病気、出産などには、健康保険が適用されます。
労災保険は、従業員が個別で加入するのではなく、事業所が加入し、事業所で働く従業員に適用されます。そのため、労災保険の保険料は、従業員ではなく事業所が全額負担します。
正解とまとめ
ここまで見たように、
- A:〇
- B:×
- C:〇
- D:〇
となります。答えは選択肢2です。