平成31年前期 保育士試験 社会福祉の問6の解説です。
問6は生活困窮者支援に関する記述の問題で、記述の正誤を問われています。
記述AからDをみていきましょう。
問題文は全国保育士養成協議会のホームページで無料公開されています。
こちら(全国保育士養成協議会サイト)から閲覧、ダウンロードできます。
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Contents
問6-A の解き方
Aは、「生活困窮者住居確保給付金制度」に関する質問です。
生活困窮者自立支援制度は、経済的に困窮し最低限度の生活を維持することができなくなるおそれがある方へ包括的な支援を行う制度です。
平成27年度(2015年)に生活困窮者自立支援法が施行され、生活全般にわたるさまざまなお困りごとについて自立相談支援事業所が窓口となって相談支援を行っています。相談窓口を全国に設置して、相談を受け付けています。
生活困窮者自立支援制度では、以下の事業に取り組んでいます。
- 自立相談支援事業
- 就労準備支援事業
- 住居確保給付金事業
- 家計改善支援事業
- 一時生活支援事業(居住支援含む)
- その他生活困窮者の自立の促進に必要な事業
住居確保給付金は、離職などで住むところがなくなった方や、住む場所を失うおそれが高い方には、就職活動することを条件などに、一定期間、家賃相当額を支給します。生活の土台となる住居を整えた上で、就職を支援します。
記述Aには、「生活困窮者自立支援対策の一つに、安定した住居の確保と就労自立を図ることを目的として、生活困窮者住居確保給付金制度がある。」と書かれています。
よって、Aは正解「〇」です。
生活保護法との関係
生活保護法は、保護を必要とする状態にある者が対象です。条件に合う人のみに支給される支援制度です。
一方、生活困窮者自立支援法は、経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある人が対象になります。生活保護法に該当しない、生活困窮者として苦しい生活を過ごしている人が対象になったんです。
また、 生活保護状態を脱し、生活困窮状態を抜けて、自立した生活ができるようになるためには、生活保護法に基づく事業だけでなく、生活困窮者自立支援法に基づく事業と連携して連続的な支援を行うことが重要であるとしています。
生活困窮者の自立相談支援事業で相談を受けた場合、生活保護が必要と判断するのであれば確実に生活保護につなぎ、そうでないのであれば、自立支援法に基づいた事業で適切な支援を行っていくとしています。
生活困窮者自立支援制度 について詳しくは、こちらをご覧ください。
問6-Bの解き方
Bは、「自立相談支援事業の実施主体」に関する問いです。
生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業では、まずは、就職や住まい、家計管理などの困りごとや不安を抱えている方の地域の相談窓口を設置します。そして、どのような支援が必要か、支援員が一緒に考えます。具体的なプランを作成し、寄り添いながら、自立に向けて支援します。
自立相談支援事業は自治体直営もしくは委託先で実施されています。
しかし、記述Bには、「自立相談支援事業の実施主体は、福祉事務所の設置自治体の直営のみとされており、民間団体への委託は禁止されている。」とあります。
民間団体への委託は禁止されていないので、Bは間違い「×」です。
自立相談支援事業や運営主体について、詳しくはこちらをご覧ください。
問6-Cの解き方
Cは「子どもの貧困対策に関する大綱 」に関する問いです。
子どもの貧困対策に関する大綱 は、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(平成25年(2013)成立)に基づき、平成 26年(2014)に「子供の貧困対策に関する大綱」が策定され、5年ぶり令和元年(2019)11月に「新たな大綱」に改訂されました。
新たな大綱では、子供の「将来」だけでなく「現在」の生活等に向けても子供の貧困対策を総合的に推進することが明記されました。
重点施策として、「教育支援」「生活の安定に資するための支援」「保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援」「経済的支援」があげらています。
一方、記述Cをみると、「子供の貧困対策に関する大綱」では、重点施策として、教育の支援、生活の支援、保護者に対する就労の支援、経済的支援等をあげている。」とあります。
よってCは、正解「〇」です。
「改訂版 子どもの貧困対策に関する大綱 」 について
こちらの資料によくまとまっています。「何が変わった?子供の貧困対策に関する大綱(2019年)を徹底解説!【永久保存版】」
問6-Dの解き方
Dは「生活福祉資金貸付制度」に関する問いです。
生活福祉資金貸付制度は、低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支えるとともに、その在宅福祉および社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度です。
本貸付制度は、都道府県社会福祉協議会を実施主体として、県内の市区町村社会福祉協議会が窓口となって実施しています。
記述Dをみると、「福祉事務所では、低所得世帯などを対象にして、生活福祉資金貸付制度を行っている。」とあり、実施主体が、福祉事務所となっています。
よって、Dは間違い「×」です。
社会福祉協議会 とは
用語集「社会福祉協議会」を参照ください。
福祉事務所とは
福祉事務所とは、社会福祉法第14条に規定されている「福祉に関する事務所」をいいます。
都道府県及び市(特別区を含む。)は設置が義務付けられており、町村は任意で設置することができます。
福祉六法(*)に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務を司る第一線の社会福祉行政機関です。
都道府県及び市(特別区を含む。)は設置が義務付けられており、町村は任意で設置することができます。
1993年(平成5年)4月には、老人及び身体障害者福祉分野で、2003年(平成15年)4月には、知的障害者福祉分野で、それぞれ施設入所措置事務等が都道府県から町村へ移譲されたことから、都道府県福祉事務所では、従来の福祉六法から福祉三法(生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法)を所管することとなりました。
(*)福祉六法
- 生活保護法
- 児童福祉法
- 母子及び寡婦福祉法
- 老人福祉法
- 身体障害者福祉法
- 知的障害者福祉法
正解とまとめ
ここまで見たように、
- A 〇
- B ×
- C 〇
- D ×
なので、正解は選択肢2です。